青々とした山に囲まれ、時には深い霧が立ち込める。
静けさのなかで自然と向き合いながら、黙々と作陶に取り組む人々が集まっている小さな窯業集落が、兵庫県 丹波篠山市にある「立杭地区」です。平安時代末期から約850年つづく丹波焼という文化は、集落に住む人々の自然と共生した暮らしとともに、ゆっくりと、たいせつに育まれてきました。
工業化はせず、そのときどきの時代の流れに合わせた日用陶器を、手のなかでつくり続けてきたのが産地の特徴。現在、産地には約60件の窯元が残っており、集落を散策しながら「60通りの暮らしの視点」を楽しむことができるでしょう。丹波の山土と田土から成る陶器は独特な厚みがあり、立杭地区の自然豊かな風土と、素朴なやさしさが感じられます。